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引き寄せばただには寄らで春駒の
綱引きするぞなはたつと聞く

歌の意味
引き寄せようとすると素直には寄って来ないで、春の若駒のように綱を引いて逆らう。そうすると縄が切れる、浮き名が立つと聞いている。
鑑賞
巻第十八 雑賀 1185

詞書「題しらず」
 引き寄せようとしても素直に寄って来ず、春の若駒のように綱を引いて逆らうと、縄が切れ、浮き名が立つと聞くと詠む歌である。思うようにならない相手を、綱を引いて逆らう春駒にたとえ、「縄絶つ」と「名は立つ」を掛けて、無理に引き寄せればかえって噂が立つと戯れている。ここから、恋や人とのやりとりにかかわる歌が並ぶ。
 作者の平定文は、平中とも呼ばれ、色好みの人物として平中物語の主人公とされる。中古三十六歌仙の一人である。

 初句「引き寄せば」は、引き寄せようとすると、の意で、「ば」は未然形について仮定を表す。
 二句「ただには寄らで」は、素直には寄って来ないで、の意で、「で」は打消の接続助詞である。
 三句「春駒の」は、春の野の若い馬のように、の意で、勢いのよい若駒に、意のままにならない相手をたとえている。
 四句「綱引きするぞ」は、綱を引いて逆らう、の意で、「ぞ」は強めを表す。ここで句切れとなる四句切れの歌である。
 結句「なはたつと聞く」は、「なはたつ」が「縄絶つ」と「名は立つ」を掛ける掛詞である。綱が切れる意と、浮き名が立つ意を重ねている。

はるごま:春駒。春の野に放たれた若い馬
なはたつ:「縄絶つ」と、浮き名が立つ意の「名は立つ」を掛ける
作者
平定文
出典
拾遺和歌集
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