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世の中に異なる事はあらずとも
とみはたしてむ命長くは

歌の意味
世の中に格別に変わったことはなくとも、命さえ長ければ、富はきっと手に入れることだろう。
鑑賞
巻第十八 雑賀 1178

詞書「子を、とみはたと名付けて侍りけるに、袴着すとて」
 世の中に格別のことはなくとも、命さえ長ければ富はきっと手に入れるだろうと詠む歌である。詞書から、「とみはた」と名づけた子の袴着の祝いに詠んだ歌とわかる。子の名の「とみはた」に「富は果たし」を詠み込み、長寿と富貴を願う名にふさわしく、命長く生きて富を得るよう祝っている。本巻の前半の賀の歌を締めくくる歌で、このあとに連歌の一群が続く。
 作者の「もとすけ」は清原元輔である。清少納言の父で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進にあたった。三十六歌仙に数えられる。

 初句「世の中に」は、世の中に、の意である。
 二句「異なる事は」は、格別に変わったことは、の意で、特別な出世や幸運をいう。
 三句「あらずとも」は、なくとも、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
 四句「とみはたしてむ」は、子の名の「とみはた」に「富は果たしてむ」を掛ける掛詞である。「てむ」は強い推量を表し、富はきっと果たすだろう、の意となる。ここで句切れとなる四句切れの歌で、結句はその条件を倒置して示している。
 結句「命長くは」は、命さえ長ければ、の意で、長寿を何よりの条件として祝っている。本巻の巻頭の第千百五十九首の三句「百年の」と、長い命を祝う点で通い合っている。

とみはた:子の名「とみはた」に、「富は果たし」を掛ける
はかまぎ:袴着。幼児が初めて袴を着ける祝いの儀式
作者
清原元輔
出典
拾遺和歌集
前の歌
白雪は降り隠せども千代までに 竹の緑は変はらざりけり
次の歌
引き寄せばただには寄らで春駒の 綱引きするぞなはたつと聞く