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夢とのみ思ひなりにし世の中を
何今更に驚かすらん

歌の意味
夢とばかり思うようになってしまったあなたとの仲を、どうして今さらになって目覚めさせようとするのだろうか。
鑑賞
巻第十八 雑賀 1206

詞書「中納言平惟仲久しくありて消息して侍りける返事に書かせ侍りける」
 夢とばかり思うようになってしまった二人の仲を、どうして今さら目覚めさせようとするのかと詠む歌である。詞書から、中納言平惟仲が久しぶりに便りをよこしたので、その返事として書かせた歌とわかる。長く途絶えた末の便りに対し、すでに夢と思い定めた仲を今さら呼び覚まされても困ると、冷ややかに突き放しながらも、心を揺さぶられた思いがにじんでいる。前の二首が訪れのない住まいを詠んだのに続き、久しく途絶えた相手からの便りを詠んでいる。
 作者の「高階成忠女」は高階貴子である。高階成忠の娘で、関白藤原道隆の妻となり、伊周や中宮定子を生んだ。儀同三司母とも呼ばれ、百人一首の「忘れじの」の歌で知られる。

 初句「夢とのみ」は、夢とばかり、の意で、はかなく終わった仲をいう。
 二句「思ひなりにし」は、思うようになってしまった、の意で、「に」は完了、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 三句「世の中を」は、男女の仲を、の意である。
 四句「何今更に」は、どうして今さら、の意で、「何」は疑問を表し、結句の「らん」と呼応している。
 結句「驚かすらん」は、目を覚まさせようとするのだろうか、の意で、「驚かす」は初句の「夢」の縁で、眠りから覚ます意である。「らん」は原因を推量する助動詞である。

おどろかす:驚かす。目を覚まさせる
せうそこ:消息。便り、手紙
作者
高階貴子
出典
拾遺和歌集
前の歌
いにしへは誰が古里ぞおぼつかな 宿もる雨に問ひて知らばや
次の歌
人も見ぬ所に昔君と我が せぬわざわざをせしぞ恋しき