- 歌の意味
-
吉野川の岸の山吹が咲いたので、川の底にこそ深い山吹の色が見えるのだった。
- 鑑賞
-
巻第二 春歌下 114
詞書「水辺款冬といへる心をよめる」
「水辺款冬(水辺の山吹)」という題で詠んだ歌である。吉野川の岸の山吹が咲いたので、その花が水に映り、川の底にこそ深い黄色が見えることだ、と詠む。岸に咲く花そのものよりも、深い川底に映る色のほうが濃く見えるという発見を、「底」と「深き」とを響き合わせて表している。
作者の「藤原範綱」は伝が詳らかでない人物で、出家してのちは西遊と号したとされる。
初句「吉野川」は、大和国の歌枕で、山吹とともに詠まれることも多い。
二句「岸の山吹」は、川岸に咲く山吹をいい、詞書の題「水辺款冬」を表す。
三句「咲きぬれば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、咲いたので、の意である。
四句「底にぞ深き」の「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」と係り結びをなす。川の「底」と色の「深き」とを響き合わせ、水に映る山吹の色の濃さを示す。
結句「色は見えける」の「ける」は気づきを表す「けり」の連体形で、「ぞ」の結びとなる。次歌の第百十五首も「色にぞ澄める」と、水と山吹の色とを詠む。
くわんとう:山吹の漢名、款冬
- 作者
-
藤原範綱
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
九重に八重山吹をうつしては 井手のかはづの心をぞくむ
- 次の歌
-
くちなしの色にぞ澄める山吹の 花の下行く井手の川水