小萩原まだ花咲かぬ宮城野の
鹿や今宵の月に鳴くらん
- 歌の意味
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萩の原にまだ花の咲かない宮城野の鹿は、秋のような今宵の月に誘われて、鳴いているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 218
詞書「大宮前太政大臣家にて、夏月如秋といへる心をよめる」
大宮前太政大臣藤原伊通の邸で、「夏月如秋(夏の月が秋のようである)」という題で詠んだ歌である。萩の名所である宮城野の萩はまだ花を咲かせていないが、今宵の月はまるで秋の月のようなので、宮城野の鹿は秋と思い違えて鳴いているのだろうか、と詠む。萩と鹿という秋の景物を引き出し、夏の月の澄んだ光を秋に見紛うものとして表している。ここから秋の近さを詠む歌が続く。
作者の「藤原敦仲」は伝の詳らかでない人物である。
本歌から第二百二十首までの三首は、夏の終わりに秋の気配を感じる歌を並べる。
初句「小萩原」は、萩の生い茂る野原をいい、「小」は接頭語である。
二句「まだ花咲かぬ」は、まだ花の咲かない、の意で、季節がまだ夏であることを示す。
三句「宮城野の」の「宮城野」は陸奥国の歌枕で、萩の名所として知られる。本巻の第百九十四首の「宮城が原」は照射の狩場として詠まれたが、本歌では萩と鹿の名所として詠まれる。
四句「鹿や今宵の」の「鹿」は秋に妻を求めて鳴くとされ、萩とともに秋の景物である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。
結句「月に鳴くらん」の「らん」は現在推量の助動詞の連体形で、「や」の結びとなる。秋のような月に誘われて鹿が鳴くのだろうと推し量る。
こはぎはら:萩の生い茂る野原
みやぎの:陸奥国の歌枕で、萩の名所
- 作者
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藤原敦仲
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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夕立のまだ晴れやらぬ雲間より 同じ空とも見えぬ月かな
- 次の歌
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夏衣すそのの原を分け行けば 折りたがへたる萩が花摺り