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夏衣すそのの原を分け行けば
折りたがへたる萩が花摺り

歌の意味
夏衣の裾を引いて裾野の原を分けて行くと、季節の折を取り違えて咲いた萩の花が、衣に花摺りの模様をつけたことだ。
鑑賞
巻第三 夏歌 219

詞書「草花先秋といへる心をよめる」
 「草花先秋(草花が秋に先立つ)」という題で詠んだ歌である。夏衣を着て裾野の原を分けて行くと、季節の折を取り違えて秋に先立って咲いた萩の花が衣に触れて、花摺りの模様がついた、と詠む。「すその」に衣の「裾」と「裾野」とを掛け、夏衣に萩の花摺りという夏と秋の取り合わせによって、秋に先立って咲く花を描いている。
 作者の「顕昭法師」は藤原顕輔の猶子となった僧である。六条藤家の歌学を受け継いだ歌学者で、「袖中抄」などの注釈書を著した。

 初句「夏衣」は、夏に着る薄い衣をいう。本巻巻頭の第百三十六首と同じ初句で、巻頭の衣替えの夏衣が、巻末近くで秋の花に染められる。
 二句「すそのの原を」の「すその」は、衣の「裾」と、山のふもとの「裾野」とを掛け、「衣」の縁語となる。
 三句「分け行けば」は、野の草を分けて進むと、の意である。
 四句「折りたがへたる」は、季節の折を取り違えた、の意で、秋の花である萩が夏のうちに咲いたことをいう。
 結句「萩が花摺り」は体言止めで、萩の花を衣に摺りつけて染めた模様をいう。夏衣に秋の萩の色がつくという取り合わせで、題の「先秋」を表す。前歌の第二百十八首がまだ咲かない萩を詠んだのに対し、本歌は早くも咲いた萩を詠み、対照をなしている。

すその:衣の「裾」と、山のふもとの「裾野」を掛ける
はなずり:花を衣に摺りつけて染めること、その模様
をりたがふ:季節の折を取り違える
作者
顕昭
出典
千載和歌集
前の歌
小萩原まだ花咲かぬ宮城野の 鹿や今宵の月に鳴くらん
次の歌
秋風は浪とともにや越えぬらん まだき涼しき末の松山