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天の川心をくみて思ふにも
袖こそ濡るれ暁の空

歌の意味
天の川の水を汲むように、別れてゆく二星の心を推し量って思うにつけても、私の袖こそが涙に濡れることだ、この暁の空のもとで。
鑑賞
巻第四 秋歌上 241

詞書「七夕後朝の心をよみ侍りける」
 「七夕後朝」、すなわち七夕の逢瀬の翌朝の別れの心を詠んだ歌である。天の川の水を汲むように、別れてゆく織女と牽牛の心を汲み取って思いやるにつけても、二星ではなく私の袖こそが涙に濡れる、暁の空のもとで、と詠む。二星の別れの悲しみを我がことのように受け止める心を表し、七夕の一連を結んでいる。
 作者の「土御門右のおほいまうちきみ」は源師房である。村上天皇の皇子具平親王の子で、臣籍に降って右大臣に至った。土御門に邸があったことから土御門右大臣と呼ばれ、村上源氏の繁栄の基を築いた。
 七夕の一連の最後の歌である。一連の始まりの第二百三十五首が結句を「夕暮の空」としたのに対し、本歌は「暁の空」で結び、夕暮れから暁へと一夜の時の流れをたどる一連が呼応して閉じられる。

 初句「天の川」は、二星を隔てる天上の川で、二句の「くみて」と縁語の関係にある。本巻の第二百三十九首「天の河原」に続き、天の川を詠む。
 二句「心をくみて」の「くむ」は、天の川の水を「汲む」意と、二星の心を推し量る意とを掛ける。
 三句「思ふにも」は、思いやるにつけても、の意である。
 四句「袖こそ濡るれ」の「こそ」は係助詞で、「濡るれ」と已然形で結ぶ。別れる二星ではなく、思いやる私の袖こそが濡れる、と強調する。ここで句切れとなる。
 結句「暁の空」は体言止めで、後朝の別れの時を示す。一連の始まりの第二百三十五首「夕暮の空」と対をなし、七夕の一連を閉じる。

くむ:天の川の水を「汲む」意と、人の心を推し量る意を掛ける
きぬぎぬ:共寝をした男女が翌朝別れること、後朝
作者
源師房
出典
千載和歌集
前の歌
七夕に花染め衣脱ぎかせば 暁露のかへすなりけり
次の歌
秋来れば思ひ乱るる刈萱の 下葉や人の心なるらん