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いかばかり露けかるらんさを鹿の
妻恋ひかぬる小野の草臥し

歌の意味
どれほど露に濡れていることだろう。妻を恋い慕いながら思いを遂げられずにいる牡鹿の、小野の草むらの寝床は。
鑑賞
巻第五 秋歌下 324

詞書は前の歌に続き「鹿の歌とてよめる」
 「鹿の歌」として詠んだ歌である。妻を恋い慕いながら思いを遂げられずにいる牡鹿が、小野の草むらに伏して寝る寝床は、どれほど露に濡れていることだろう、と詠む。草の露に鹿の涙を重ね、鹿の身の上を思いやっている。
 作者の「長覚法師」は院政期の僧であるが、詳しい伝は明らかでない。
 本歌は、「鹿の歌」として詠まれた第三百十七首から第三百二十五首までの九首の一連の八首目である。

 初句「いかばかり」は、どれほど、の意で、程度を思いやる。
 二句「露けかるらん」の「露けし」は露に濡れている意で、涙に濡れることもいう。「らん」は現在推量で、ここで句切れとなり、三句以下と倒置の関係にある。本巻の第三百十八首が鹿の声に添う露を詠んだのに対し、本歌は鹿の寝床の露を詠む。
 三句「さを鹿の」の「さを鹿」は牡鹿をいう。
 四句「妻恋ひかぬる」の「恋ひかぬ」は、恋い慕いながら思いを遂げられずにいる意である。本巻の第三百七首第三百八首第三百十七首と同じく、妻を求める鹿を詠む。
 結句「小野の草臥し」は体言止めである。「草臥し」は草むらに伏して寝ること、またその場所で、本巻の第三百十首が人の「床」を詠んだのに対し、鹿の寝床を詠む。

くさぶし:草むらに伏して寝ること、またその場所
こひかぬ:恋い慕いながら思いを遂げられずにいる
作者
長覚
出典
千載和歌集
前の歌
寂しさを何にたとへんを鹿鳴く 深山の里の明け方の空
次の歌
尾上より門田に通ふ秋風に 稲葉を渡るさを鹿の声