暁の寝覚めに過ぐる時雨こそ
漏らでも人の袖濡らしけれ
- 歌の意味
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暁の寝覚めに通り過ぎてゆく時雨こそは、屋根から漏れなくても人の袖を濡らすものであったよ。
- 鑑賞
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巻第六 冬歌 417
詞書「題しらず」
暁の寝覚めに通り過ぎてゆく時雨こそは、屋根から漏れてこなくても人の袖を濡らすものであった、と詠む。袖を濡らすのは雨ではなく、寝覚めに聞く時雨の音にさそわれてこぼれる涙である。
作者の「紀康宗」は院政期の歌人であるが、詳しい伝は明らかでない。
本巻の第四百三首の「音にさへ袂を濡らす時雨」と同じ趣で、また第四百四首の「漏らぬ時雨」、第四百五首の「漏らで時雨の」と「漏る」の語を共有する。寝覚めに聞く時雨を詠んできた一連を、ここで結んでいる。
初句「暁の」は、夜明け前のまだ暗い時分をいう。本巻の第四百六首、第四百七首の暁更時雨の歌と同じ時分である。
二句「寝覚めに過ぐる」の「寝覚め」は夜中にふと目が覚めることである。本巻の第四百二首、第四百三首と同じく、寝覚めに時雨を聞く。
三句「時雨こそ」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けれ」と已然形で結ぶ。
四句「漏らでも人の」の「で」は打消しの接続助詞で、漏れなくても、の意である。本巻の第四百五首の「漏らで」と同じ語である。
結句「袖濡らしけれ」の「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形で、三句の「こそ」を受けて結ぶ。袖を濡らすのは涙であることを示す。
ねざめ:夜中にふと目が覚めること
もる:雨などが漏れる
- 作者
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紀康宗
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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峰越えに楢の葉伝ひおとづれて やがて軒端に時雨来にけり
- 次の歌
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散り果てて後さへ風を厭ふかな 紅葉を葺ける深山辺の里