跡も絶え栞も雪に埋もれて
かへる山路に惑ひぬるかな
- 歌の意味
-
足跡も絶え、道しるべの枝折りも雪に埋もれて、帰りの山路で迷ってしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 458
詞書は前の歌に続き「雪の歌とてよみ侍りける」
雪の歌として詠んだものである。人の足跡も絶え、来るときに道しるべとして折っておいた枝折りも雪に埋もれて、帰りの山路で迷ってしまった、と詠む。帰り道の手がかりをすべて雪に奪われた心細さを詠んでいる。
作者の「右近大将実房」は内大臣藤原公教の子である。のちに左大臣に至り、三条左大臣と呼ばれた。
第四百四十五首から第四百六十七首まで、雪を詠む歌が続く。第四百五十七首から第四百六十首までの四首は、同じ詞書のもとに置かれた雪の歌である。次歌の第四百五十九首は越前国の歌枕「かへる山」の名に興じており、本歌の「かへる山路」とつながる配列となっている。
初句「跡も絶え」は、人の足跡も途絶えて、の意である。本巻の第四百六十五首の「跡絶えて」、第四百六十七首の「跡絶えぬれば」と同じく、雪が人の跡を消すことを詠む。
二句「栞も雪に」の「栞」は、山道で帰りの目印として木の枝を折っておくこと、またその枝である。
三句「埋もれて」は、雪に埋もれて、の意である。
四句「かへる山路に」の「かへる」は、帰る意に、越前国の歌枕「かへる山」をも掛ける掛詞である。次歌の第四百五十九首の「かへる山」とつながる。
結句「惑ひぬるかな」の「惑ふ」は道に迷う意で、「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞である。
しをり:山道で帰りの目印として木の枝を折っておくこと、またその枝
かへる:帰る意と、越前国の歌枕「かへる山」を掛ける
まどふ:道に迷う
- 作者
-
藤原実房
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
山里の垣根は雪に埋もれて 野辺と一つになりにけるかな
- 次の歌
-
越えかねて今ぞ越路をかへる山 雪降る時の名にこそありけれ