古典和歌stream

越えかねて今ぞ越路をかへる山
雪降る時の名にこそありけれ

歌の意味
越えかねて、今こそ越路を引き返す。かへる山とは、雪の降る時のためにつけられた名であったのだ。
鑑賞
巻第六 冬歌 459

詞書は前の歌に続き「雪の歌とてよみ侍りける」
 雪の歌として詠んだものである。雪のために越えかねて、今こそ越路を引き返す、かへる山とは、雪の降る時のためにつけられた名であったのだ、と詠む。越前国の歌枕「かへる山」の名を、雪で越えられずに引き返すことの由来と見なして興じた歌である。
 作者の「前右京権大夫頼政」は兵庫頭源仲正の子である。保元、平治の乱を経て従三位に至り、源三位と呼ばれた。治承四年(1180)、以仁王を奉じて平家打倒の兵を挙げ、宇治で敗れて自害した。
 第四百四十五首から第四百六十七首まで、雪を詠む歌が続く。第四百五十七首から第四百六十首までの四首は、同じ詞書のもとに置かれた雪の歌である。前歌の第四百五十八首の「かへる山路」を受け、本歌は歌枕「かへる山」そのものを詠む。

 初句「越えかねて」の「越えかぬ」は、越えようとして越えられない意である。
 二句「今ぞ越路を」の「越路」は越の国へ通じる道、北陸道である。「ぞ」は強意の係助詞で、三句の「かへる」と連体形で結ぶ。初句の「越え」と「越路」の「越」とを重ねている。
 三句「かへる山」の「かへる」は、引き返す意の「帰る」と、越前国の歌枕「かへる山」とを掛ける掛詞である。ここで句切れとなる。
 四句「雪降る時の」は、雪の降る時のための、の意で、山の名の由来を示す。
 結句「名にこそありけれ」の「こそ」は強意の係助詞で、「けれ」と已然形で結ぶ。「けり」は詠嘆の助動詞で、そういう名であったのだ、と気づきを示す。

こえかぬ:越えようとして越えられない
こしぢ:越の国へ通じる道、北陸道
かへる:引き返す意の「帰る」と、越前国の歌枕「かへる山」を掛ける
作者
源頼政
出典
千載和歌集
前の歌
跡も絶え栞も雪に埋もれて かへる山路に惑ひぬるかな
次の歌
波間より見えし景色ぞ変はりぬる 雪降りにけり松が浦島