千歳まで折りて見るべき桜花
梢遥かに咲き初めにけり
- 歌の意味
-
千年の後まで折り取って眺めることのできる桜の花が、梢の遥か高くに咲き始めたことだ。
- 鑑賞
-
巻第十 賀歌 611
詞書「同じ御時、后の宮にて花契☆年といへる心を、上の男ども仕うまつりけるに、詠ませ給うける」
前歌と同じく堀河天皇の御代、中宮の御所で「花契☆年」という題を殿上人たちが詠んだ折に、天皇自らが詠んだ歌である。千年の後まで折り取って眺めるはずの桜の花が、梢の遥か高くに咲き始めた、と詠む。高い梢に咲き初めた花を、これから千年にわたって見続ける花の始まりと見て、御代の長久を花に託している。后の宮は堀河天皇の中宮篤子内親王をさす。なお題の一字は本文で「☆」と表記されて判読できないため、原文のまま示す。
作者の「堀河院御製」は、白河天皇の第二皇子で第七十三代の天皇であった堀河院の詠んだ歌を示す。和歌や管弦を好み、その御代には堀河百首が詠進されるなど歌壇が栄えた。
前歌の第六百十首は年の始めの若水に千代の始めを見て、本歌は咲き初めの桜に千年の始めを見ており、ともに始まりの景物に長久を託している。
初句「千歳まで」は、千年の後まで、の意である。
二句「折りて見るべき」の「べき」は当然、可能の助動詞「べし」の連体形で、折り取って眺めることのできる、の意である。
三句「桜花」は、二句を受けて結句の「咲き初め」の主語となる。
四句「梢遥かに」は、梢の遥か高いところに、の意である。遥かな梢が、これから続く千年の遥かな年月を思わせる。
結句「咲き初めにけり」の「初め」は動詞「初む」の連用形で、咲き始める意である。「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は気づきの詠嘆で、咲き始めたことだ、の意である。
きさいのみや:皇后、中宮
うへのをのこ:殿上人
さきそむ:咲き始める
- 作者
-
堀河院
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
君がため御手洗川を若水に 掬ぶや千代の始めなるらん
- 次の歌
-
掘り植ゑし若木の梅に咲く花は 年も限らぬ匂ひなりけり