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君がため御手洗川を若水に
掬ぶや千代の始めなるらん

歌の意味
君のために御手洗川の水を若水として掬うことが、千代の始まりなのであろう。
鑑賞
巻第十 賀歌 610

詞書「堀河院の御時、立春の朝に、今日の心仕うまつるべきよし侍りければ奏し侍りける」
 堀河天皇の御代、立春の朝に、今日の趣を詠んで差し上げるようにとの仰せがあったので、奏上した歌である。君のために御手洗川の水を若水として掬うことこそ、千代の始めなのであろう、と詠む。立春の朝に汲む若水は邪気を払うとされ、それを神域を流れる御手洗川の水とすることで、年の始めの清らかさと御代の長久をともに祝っている。
 作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子である。堀河院歌壇の中心として活躍し、白河院の命で金葉和歌集を撰んだ。家集に「散木奇歌集」がある。小倉百人一首にも歌が採られている。
 次歌の第六百十一首も堀河院の御代の歌で、本歌は年の始めの水に、次歌は咲き初めの桜に、千代、千年の始まりを見ている。

 初句「君がため」は、君のために、の意である。君は堀河天皇をさす。
 二句「御手洗川を」の「御手洗川」は神社の参詣者が手や口を清める川で、特に賀茂社の御手洗川が名高い。
 三句「若水に」の「若水」は立春の朝、または元日の朝に汲む水で、邪気を払うとされた。
 四句「掬ぶや千代の」の「掬ぶ」は手で水をすくう意である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と連体形で結ぶ。
 結句「始めなるらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、四句の「や」を受けて結ぶ。千代の始まりなのであろう、の意である。本巻の第六百十七首の「千代の始めの」と共通する。

みたらしがは:参詣者が手や口を清める社頭の川
わかみづ:立春または元日の朝に汲む水
むすぶ:手のひらで水をすくう
つかうまつる:歌を詠んで差し上げる
そうす:天皇に申し上げる
作者
源俊頼
出典
千載和歌集
前の歌
君が代は天の香具山出づる日の 照らむ限りは尽きじとぞ思ふ
次の歌
千歳まで折りて見るべき桜花 梢遥かに咲き初めにけり