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万代も住むべき宿に植ゑつれば
松こそ君が陰を頼まめ

歌の意味
万代も住み続けるはずの宿に植えたのだから、松の方こそ君の庇護を頼りにすることであろう。
鑑賞
巻第十 賀歌 629

詞書は前の歌に続き「閑院の家にて、初めて対松争齢といへる心を詠み侍りける」
 前歌と同じ会で詠んだ歌である。万代も住むはずの宿に植えたのだから、松の方こそ君の陰を頼みとするであろう、と詠む。ふつうは人が松の陰を頼むところを逆にして、松が主の陰を頼るとし、主の寿命が松の千年にもまさるとして、題の「松に対して齢を争ふ」に応え、主の長寿を祝っている。
 作者の「源通能朝臣」は平安時代後期の官人、歌人である。経歴の詳細は多く伝わらない。
 一連の二首目である。前歌の第六百二十八首が松を友として見ると詠んだのに対し、本歌は松が君の陰を頼むと詠み、立場を入れ替えて応じている。

 初句「万代も」は、万代の後までも、の意である。前歌の四句「万代までの」と応じる。
 二句「住むべき宿に」の「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形で、住み続けるはずの宿に、の意である。
 三句「植ゑつれば」の「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形で、「ば」が付いて、植えたのだから、の意となる。
 四句「松こそ君が」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の「め」と已然形で結ぶ。人ではなく松の方こそ、と立場を逆にしている。
 結句「陰を頼まめ」の「陰」は庇護、「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、四句の「こそ」を受けて結ぶ。本巻の第六百二十五首が松陰を頼むと詠むのと反対の構図である。

かげ:木陰。転じて庇護、恩恵
作者
源通能
出典
千載和歌集
前の歌
千歳経る尾上の小松移し植ゑて 万代までの友とこそ見め
次の歌
笛の音の万代までと聞こえしを 山も答ふる心地せしかな