深く思ふことし叶はば来む世にも
花見る身とやならんとすらん
- 歌の意味
-
深く願っていることがもし叶うならば、来世でもまた花を見る身となろうとするのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌中 1074
詞書「花の歌とて詠める」
花の歌として詠んだ歌である。深く願うことがもし叶うならば、来世にも花を見る身となろうとするのだろうか、と詠む。仏道を思う者ならば来世には極楽往生を願うべきであるのに、心の底で深く願っているのは来世でもまた花を見る身に生まれることであると、花への断ちがたい執心を自ら問いかけるように詠んでいる。
作者の「源季広」は平安時代後期の歌人で、伝記の詳細は明らかでない。
本巻の第千六十七首が後世の供養に桜を供えよと詠んだのと、死後の世にも花に心を寄せる点で通う。
初句「深く思ふ」は、深く願う、の意である。六音の字余りである。
二句「ことし叶はば」の「し」は強意の副助詞で、未然形に「ば」が付いて、もし叶うならば、と仮定を表す。
三句「来む世にも」の「来む世」は来世、死後に生まれ変わる世の意である。本巻の第千六十七首の四句「我が後の世を」と、死後の世を詠む点で通う。
四句「花見る身とや」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」で結ぶ。
結句「ならんとすらん」は、なろうとするのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞である。
こむよ:来世、死後に生まれ変わる世
かなふ:願いが実現する
- 作者
-
源季広
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
いづくにて風をも世をも恨みまし 吉野の奥も花は散るなり
- 次の歌
-
老いが世に宿に桜を移し植ゑて なほ試みに花を待つかな