夏のうちははたかくれてもあらずして
おりたちにける虫の声かな
- 歌の意味
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夏のうちは物陰に隠れてもいないで、もう表に降り立って鳴いている虫の声であることだ。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1184
詞書「六月のつごもり方に、はたおりの鳴くを聞きて詠める」
六月の末ごろ、はたおりが鳴くのを聞いて詠んだ歌である。夏のうちは物陰に隠れてもいないで、降り立った虫の声だ、と詠む。秋の虫であるはたおりが、まだ夏のうちから鳴き出したことをおもしろがり、二句の「はた」と四句の「おり」に虫の名の「はたおり」を分けて詠み込み、さらに「おり」に機を織る意を響かせている。
作者の「江侍従」は文章博士大江匡衡の娘で、母は赤染衛門である。
誹諧歌の一連の五首目で、夏の終わりの虫を詠み、次歌から秋の歌へと移る。
初句「夏のうちは」は、まだ夏のうちは、の意で、詞書の六月の末に応じている。
二句「はたかくれても」の「はたかくれ」は物の端に隠れること、物陰に隠れることで、「はた」に虫の名の「はたおり」の「はた」を掛けている。
三句「あらずして」は、そうではなくて、の意である。
四句「おりたちにける」の「おりたち」は、降り立つ意と、機を織る意の「織り」とを掛け、二句の「はた」と合わせて「はたおり」の名を詠み込んでいる。
結句「虫の声かな」は、虫の声であることだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。
はたおり:機織虫、今のきりぎりすの類で、鳴き声が機を織る音に似る
はたかくる:物の端に隠れる、「はた」に虫の名の「はたおり」を掛ける
おりたつ:降り立つ意と、機を織る意とを掛ける
つごもり:月の末
- 作者
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江侍従
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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照射して箱根の山にあけにけり ふたよりみよりあふとせしまに
- 次の歌
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秋来れば秋の気色も見えけるは 時ならぬ身と何にいふらん