あなたがいる辺りを遠く見続けてじっとしていましょう。雲よ、たとえ雨が降っても大和との間にそびえる生駒山を隠さないでほしい。
あなたが来ると言った夜ごとに、来てくれないので待ちぼうけのまま、むなしくすぎてしまう。このごろは当てにはしていないけど、恋しつづけながら時を過ごしている。
私は愛しているのに、同じようには私のことを思ってくれないで離れ去ってしまう人を引き止めることができなくて私は今、消え果ててしまう。
盥(たらい)の水の取入れ口のところに私の姿が映っている見えるのでしょうか。田に水を引き込む取入れ口のあたりでは蛙さえ声を合わせて鳴くもので、私もあなたと声を合わせて泣いているのだ。
美しい花を見ても飽きることはなく、いつまでも見ていたいという嘆きは花を見るといつもあったが、今日のこの夜のように強く思うことはこれまでになかった。