伊勢物語
あちらこちら多くの巣を持って飛び回り、死出の田長と呼ばれるほととぎすはあまり好きにはなれないが頼りにされよう。私の住む里で声を聞かせてくれるならば。
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都を出立して行くあなたのために贈り物にしようと裳を脱いでしまったので私自身もなくなっていまいそうだ。
空に飛び上がってゆく蛍よ。雲の上まで行くことができるのならば、秋風が吹いていると雁に告げてくれ
日が長く暑さの残る夏の長い一日をもの思いにふけりながらぼんやりしていると、無性にあらゆる物が物悲しく感じる。
逢わないでいても離れていると思うことはない。忘れる時などはなく、あなたの姿が幻となって私の目の前にある。
大幣(おおぬさ)のようにたくさんの人から引っぱれるようなので、好きだと思っていても頼りにすることはできません。
だれからも求められる大幣のだと有名になっているが、川に流された大幣も最後には寄りつく浅瀬があるものだ。
なかなか来ない人を待つのが苦しいものだと今こそよく分かった。だから人が待っているであろう場所は訪問すべきだった。
葉が若く柔らかな若草の上に寝転んだら気持ちいいだろう。その若草をだれかが草枕に結んで寝るだろうと気になる。
早春に思いがけず見つけた若草とでも言うように、めずらしく思いがけない言葉です。今までは何も気にせず兄弟だと思っていたのに。
鳥の卵を百個も重ねることはできないが、たとえそれが重なったとしても、ほんとうに思ってもくれない人を思うものか。
はかなく消えてしまう朝露は、それども消え残ってもいるだろう。しかしその朝露よりもずっとはかない、あなたとの仲を誰が頼りにすることができるだろうか。
風が吹けば桜の花は散るものだが、去年の桜が散らずに残ったとしても人の心はあり得ないことよりも、さらに頼りにならない。
流れていく水の上に数書いても消え去ってはかないが、さらにはかないのは、思ってくれない人を慕って思うことだ。
流れ行く水と過ぎ去る年月と散る花と、どれが待てという言葉を聞くだろうか。
しっかり植えたので秋がないときは咲かないが、毎年秋はあるので美しく咲く。花は散るでしょうが根まで枯れだろうか、いや枯れないだろう。