いとしいと思う甲斐もない夫婦の仲だった長い年月を、不誠実な関係を持って私は暮らしていたのだろうか。そんなことは全くなかったのに。
あの人は出て行ってしまったが、そうは言っても私のことをなつかしく思っているのだろうか。あの人の面影が幻となっていよいよ見えてくる。
今となっては二人の関係も終わったのだから忘れてしまおうと言って、忘れてしまおうと忘れ草の種を心に蒔くことだけは、あなたの思いどおりにならないでほしい。
お互いに夫婦となったうえは心ひとつにして、川中の島で水が分かれ流れても、また合流して絶えることなく流れるように、二人の仲も耐えることのないようにしたい。
あなたとどちらか長いか、ずっとくらべていたおかっぱの髪も今では肩のあたりを過ぎて長くなってしまった。しかしあなたではなく、誰が私の髪上げをしてくれることができるだろうか。