手紙に武蔵鐙(むさしあぶみ)と書いて送ってくさいましたが、私以外の女にも関わるあなたが、心にかけて頼りにしている私としては、便りをくださらないのも辛く、かと言って便りをくれても煩わしい気がする。
便りをすればうるさいといい、便りをしなければ辛いと恨む。武蔵鐙が馬の背の両方にかかっているように、どちらにもひっかかる。このような時にどうしていいか迷って人は死ぬのだろうか。
夜も明けたなら水槽につっこんでやらずにおくものか、あのばかな鶏が夜も明けないうちに早々と鳴いて、いとしい夫を送りだしてしまったことよ。
今日こなければ、この桜は雪の降るように散り落ちてしまうでしょう。雪とは違い、たとえ消えずに残っていたとしても花と見るでしょうか。
紅色に色変わりして美しく見えるのはどのあたりでしょうか。白雪が枝もたわむくらいに、降り積もっているかと思われるように真っ白に見えます。