- 表題
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- 竹取物語
いたづらに身はなしつとも玉の枝を
手折らで更に帰らざらまし
命を捨てても、蓬莱の玉の枝を手折らなければ、帰って来なかったでしょう。 (蓬莱の玉の枝を持参したからには、私の求婚に答えてもらうまでは帰りません。)
名残なく燃ゆとしりせば皮衣
思ひの外にをきて見ましを
跡かたもなく燃えると知っていたなら、火にくべたりしないで見ていたものを(にせものとは知りもしないので、心配し火にくべてみたのです。)
年を経て波立ち寄らぬ住の江の
まつかひなしと聞くはまことか
何年経っても子安貝をお持ちいただくのをお待ちしておりますが、子安貝が取れなかったので待つ効(かい)がないと聞いたが、それは本当でしょうか。
葎はふ下にも年は経ぬる身の
何かは玉の台をも見む
葎が生い茂るこの竹取の家で、永年すごして来た私のようなものが、どうしてりっぱな御殿を見ましょうか。帝のもとでの宮仕えなどかんがえてもおりません。