- 表題
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- 伊勢物語
庵おほきしでのたおさは猶たのむ
わが住む里に声したえずは
あちらこちら多くの巣を持って飛び回り、死出の田長と呼ばれるほととぎすはあまり好きにはなれないが頼りにされよう。私の住む里で声を聞かせてくれるならば。
初草のなどめづらしき言の葉ぞ
うらなく物を思ひけるかな
早春に思いがけず見つけた若草とでも言うように、めずらしく思いがけない言葉です。今までは何も気にせず兄弟だと思っていたのに。
朝露は消えのこりてもありぬべし
誰かこの世を頼みはつべき
はかなく消えてしまう朝露は、それども消え残ってもいるだろう。しかしその朝露よりもずっとはかない、あなたとの仲を誰が頼りにすることができるだろうか。
植ゑし植ゑば秋なき時や咲かざらむ
花こそ散らめ根さへ枯れめや
しっかり植えたので秋がないときは咲かないが、毎年秋はあるので美しく咲く。花は散るでしょうが根まで枯れだろうか、いや枯れないだろう。