古典和歌stream

伊勢物語

庵おほきしでのたおさは猶たのむ
わが住む里に声したえずは

あちらこちら多くの巣を持って飛び回り、死出の田長と呼ばれるほととぎすはあまり好きにはなれないが頼りにされよう。私の住む里で声を聞かせてくれるならば。

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伊勢物語

出でてゆく君がためにと脱ぎつれば
我さへもなくなりぬべきかな

都を出立して行くあなたのために贈り物にしようと裳を脱いでしまったので私自身もなくなっていまいそうだ。

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伊勢物語

ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは
秋風ふくと雁につげこせ

空に飛び上がってゆく蛍よ。雲の上まで行くことができるのならば、秋風が吹いていると雁に告げてくれ

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伊勢物語

暮れがたき夏の日ぐらしながむれば
そのこととなく物ぞ悲しき

日が長く暑さの残る夏の長い一日をもの思いにふけりながらぼんやりしていると、無性にあらゆる物が物悲しく感じる。

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伊勢物語

目かるとも思ほえなくに忘らるる
時しなければ面影にたつ

逢わないでいても離れていると思うことはない。忘れる時などはなく、あなたの姿が幻となって私の目の前にある。

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伊勢物語

大幣の引く手あまたになりぬれば
思へどえこそ頼まざりけれ

大幣(おおぬさ)のようにたくさんの人から引っぱれるようなので、好きだと思っていても頼りにすることはできません。

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伊勢物語

大幣と名にこそたてれ流れても
つひに寄る瀬はありというものを

だれからも求められる大幣のだと有名になっているが、川に流された大幣も最後には寄りつく浅瀬があるものだ。

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伊勢物語

今ぞ知るくるしものと人待たむ
里をばかれずとふべかりけり

なかなか来ない人を待つのが苦しいものだと今こそよく分かった。だから人が待っているであろう場所は訪問すべきだった。

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伊勢物語

うら若みねよげに見ゆる若草を
ひとの結ばむことをしぞ思ふ

葉が若く柔らかな若草の上に寝転んだら気持ちいいだろう。その若草をだれかが草枕に結んで寝るだろうと気になる。

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伊勢物語

初草のなどめづらしき言の葉ぞ
うらなく物を思ひけるかな

早春に思いがけず見つけた若草とでも言うように、めずらしく思いがけない言葉です。今までは何も気にせず兄弟だと思っていたのに。

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伊勢物語

鳥の子を十づつ十は重ぬとも
思はぬ人をおもふものかは

鳥の卵を百個も重ねることはできないが、たとえそれが重なったとしても、ほんとうに思ってもくれない人を思うものか。

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伊勢物語

朝露は消えのこりてもありぬべし
誰かこの世を頼みはつべき

はかなく消えてしまう朝露は、それども消え残ってもいるだろう。しかしその朝露よりもずっとはかない、あなたとの仲を誰が頼りにすることができるだろうか。

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伊勢物語

吹く風にこぞの桜は散らずとも
あな頼みがた人の心は

風が吹けば桜の花は散るものだが、去年の桜が散らずに残ったとしても人の心はあり得ないことよりも、さらに頼りにならない。

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伊勢物語

行く水に数かくよりもはかなきは
思はぬ人を思ふなりけり

流れていく水の上に数書いても消え去ってはかないが、さらにはかないのは、思ってくれない人を慕って思うことだ。

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伊勢物語

行く水と過ぐるよはひと散る花と
いづれ待ててふことを聞くらむ

流れ行く水と過ぎ去る年月と散る花と、どれが待てという言葉を聞くだろうか。

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伊勢物語

植ゑし植ゑば秋なき時や咲かざらむ
花こそ散らめ根さへ枯れめや

しっかり植えたので秋がないときは咲かないが、毎年秋はあるので美しく咲く。花は散るでしょうが根まで枯れだろうか、いや枯れないだろう。

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