古典和歌stream

伊勢物語

あやめ刈り君は沼にぞまどひける
我は野に出でてかるぞわびしき

粽(ちまき)をまくためのあやめの葉を刈るために、あなたは沼で苦労したのですね。同じころ私は野に出て狩りをするのが、とてもつらかった。

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伊勢物語

いかでかは鳥のなくらむ人知れず
思ふ心はまだ夜深きに

どうして鳥が鳴くのだろうか。だれにも知られないように、恋い慕っている私の思いからすると、夜明けには程遠い。

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伊勢物語

行きやらぬ夢路をたのむ袂には
天つ空なる露やおくらむ

行く着くことのない夢路をたよりにして眠る私の袂には空の露で目が覚めるとびっしょり濡れている。

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伊勢物語

思はずはありもすらめどことのはの
をりふしごとに頼まるるかな

あなたは私のことなど、まったく気に掛けないでいるだろうが、あなたの言葉が何かの折にふれるたびに頼りに思えて仕方がない。

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伊勢物語

わが袖は草の庵にあらねども
暮るれば露のやどりなりけり

私の袖は木を組み草を葺いてこしらえた小屋ではなけれど、日が暮れると露の宿になってしまう。

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伊勢物語

恋ひわびぬ海人の刈る藻にやどるてふ
我から身をもくだきつるかな

恋い悩み、漁師が刈り取る海藻にすみついている「われから」という虫のように自分自身のどうにもならない気持ちのために身を砕いて苦しんだ。

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伊勢物語

荒れにけりあはれ幾世の宿なれや
住みけむひとのおとづれもせぬ

よく荒れてしまったもので、何代も住み変わった家なのだろうか。住んでいた人が訪れもしない。

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伊勢物語

葎生ひて荒れたる宿のうれたきは
かりにも鬼のすだくなりけり

葎(むぐら)が生えている家が気味悪くいやな感じがするのは、一時のことにもせよ、稲刈りをしようとすると鬼が集まることだ。

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伊勢物語

うちわびて落穂ひろふと聞かませば
我も田面にゆかましものを

暮らしに困り落ちぶれて落穂拾いをすると聞いたのならば、私も田んぼに行って手伝うものを

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伊勢物語

住みわびぬ今はかぎりと山里に
身をかくすべき宿求めてむ

都には住みづらくなってしまった。今となってはこれが最後と山里に身をかくすことのできる住居をなんとしても探したい。

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伊勢物語

わが上に露ぞおくなる天の河と
わたる舟の櫂のしづくか

私の上に露が置くようだ。この命の水は天の河の渡し場をわたる舟を漕ぐ櫂のしずくだろうか。

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伊勢物語

五月まつ花たちばなの香をかげば
昔の人の袖の香ぞする

五月をまって咲き出る橘の花の香りをかぐと昔のいとしかった人の袖の香りが薫ってくるものだ。

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伊勢物語

染河をわたらむ人のいかでかは
色になるてふことのなからむ

色を染めるという染河を渡るとすれば、その人はどうして色がつくことがないはずがあるだろうか

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伊勢物語

名にし負はばあだにぞあるべきたはれ島
浪の濡衣きるというなり

その名前のとおりであるならば浮気で誠意のないたはれ島は、けっして島自身が浮気などしないのでうちよせる波で濡れているように、事実無根のうわさをたてらているのだ。

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伊勢物語

いにしへのにほひはいづら桜花
こけるからともなりにけるかな

過ぎ去ったかつての艶やかな美しさはどこ行ってしまったのか。桜の美しい花を散らして、みすぼらしい姿になってしまったことだ。

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伊勢物語

これやこの我にあふみをのがれつつ
年月ふれどまさりがほなき

これがこの私に妻として逢う立場を捨てたまま年月を過ごし、みすぼらしくなった人か。

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