古典和歌stream

伊勢物語

葦辺より満ちくる潮のいやましに
君に心を思ひますかな

葦の生えている岸の辺りから満ちてくる潮のように、ますます私があなたによせる思いが募ってくる

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伊勢物語

こもり江に思ふ心をいかでかは
舟さすさをのさして知るべき

深く入り込んで葦など生い茂って人目のつかない入り江のように、深くひそやかな私の思いを、あなたはどうして、舟を進めるための棹を水底にさすようにはっきりと知ることができるでしょうか。

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伊勢物語

いへばえにいわねば胸にさわがれて
心ひとつに歎くころかな

口に出して言おうとすると言う事ができず、言わなければ胸の思いにさわがれ乱されて、自分の心の中だけで嘆くこの頃である。

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伊勢物語

玉の緒をあわをによりて結べれば
絶えてののちもあはむとぞ思ふ

玉を通す糸を多くの糸筋をあみあわせた弾力のある丸い組紐により上げて結んであるから、たとえ切れた後でも必ずまたあって結ばれるだろう。

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伊勢物語

谷せばみ峰まではへる玉かづら
絶えむと人にわが思はなくに

谷がせまいので山の頂までのびている蔓草のように、いつまでもあなたとの関係を切ろうと思っていないことよ

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伊勢物語

我ならで下紐とくな朝顔の
夕かげまたぬ花にはりとも

私以外の男に下裳の紐を解いてはいけないよ。朝顔の花のように夕日を待たないでうつろってしまう女であるとしても

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伊勢物語

二人して結びし紐をひとりして
あひ見るまでは解かじとぞ思ふ

あなたと二人で互いに結んだ下紐をあなたに逢うまでは、けっして解くまいと思います。

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伊勢物語

君により思ひならひぬ世の中の
人はこれを恋というらむ

あなたによって思い知った。この気持ちを世間の人は恋と言うのだろうか。

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伊勢物語

ならはねば世の人ごとに何をかも
恋とはいうふと問ひし我しも

恋の経験がないから、世間の人にいったい何を恋というのかと問う私が。

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伊勢物語

出でていなば限りなるべみともし消ち
年へぬるかと泣く声を聞け

皇女の柩が御殿を出ていってしまったなら皇女にとっては最後となるでしょう。ともし火を消して、はかなく短い御命であったと、みなが泣く声をきけ。

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伊勢物語

いとあはれ泣くぞ聞こゆるともし消ち
消ゆる物とも我は知らずな

深い悲しみがこみあげてくる。若くして亡くなってしまった皇女を惜しんで泣いている皆の泣く声が、ともし火の消えた暗い中から聞こえる。皇女がほんとうにむなしく消えてしまうか私にはわからない。

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伊勢物語

出でていなば誰か別れの難からむ
ありしにまさる今日はかなしも

女が自分から出ていったなら誰が別れ難く思うだろうか。無理に連れ去られてしまって、思うように逢えなかった今まで以上に今日は悲しい。

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伊勢物語

紫の色こき時はめもはるに
野なる草木ぞかれざりける

紫草の根の色が濃く美しい時は、見渡す限りの春野に萌え出た草木が緑一色で区別がつかず、みんな紫草のように思われる。

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伊勢物語

出でて来しあとだにいまだ変わらじを
たが通ひ路と今はなるらむ

あなたの家を出て帰ってきた私の足跡さえもまだそのまま変わらずに残っているでしょうが、何しろ浮気っぽいあなたのことだから誰かの通い道に今はもうなっているのだろうか。

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伊勢物語

ほととぎす汝がなく里のあまたあれば
猶うとまれぬ思ふものから

ほととぎすよ、おまえの鳴く里がたくさんあるので、心ひかれる鳥ではあるけれど親しいものと思えずいやな感じがする。

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伊勢物語

名のみたつしでのたをさは今朝ぞなく
庵あまたとうたまぬれば

悪い評判ばかり立って、ほととぎすは今朝はまた今朝で、あちらこちらに自分の巣も定めないで渡り歩くといって嫌われ仲間はずれにされてしまったので、泣いています。

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