古典和歌stream

伊勢物語

天雲のよそにのみしてふることは
わがゐる山の風はやみなり

空の雲のように遠く離れているのは、あなたが身をおいている山の風がはげしく吹いて私を寄せ付けないからです。

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伊勢物語

君がため手折れる枝は春ながら
かくこそ秋のもみぢしにけれ

あなたのために折ったこの枝は、春でありながら秋と同じで私の思いのように紅くなっている。

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伊勢物語

出でて去なば心軽しといいやせむ
世のありさまを人は知らねば

私が家を出て行ってしまえば、軽薄なことだと世間の人は言うかもしれない。私たち夫婦のことを世間の人は知らないので。

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伊勢物語

思ふかひなき世なりけり年月を
あだにちぎりて我や住ましつ

いとしいと思う甲斐もない夫婦の仲だった長い年月を、不誠実な関係を持って私は暮らしていたのだろうか。そんなことは全くなかったのに。

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伊勢物語

人はいさ思ひやすらむ玉かづら
面影にのみいとど見えつつ

あの人は出て行ってしまったが、そうは言っても私のことをなつかしく思っているのだろうか。あの人の面影が幻となっていよいよ見えてくる。

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伊勢物語

今はとて忘るる草のたねをだに
人の心にまかせずもがな

今となっては二人の関係も終わったのだから忘れてしまおうと言って、忘れてしまおうと忘れ草の種を心に蒔くことだけは、あなたの思いどおりにならないでほしい。

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伊勢物語

忘草植うとだにきくものならば
思ひけりとは知りもしなまし

せめて私が人を忘れる草を植えるとだけでも聞いたなら、忘れられず苦しむほど、あなたのことを思っていたと気づきもするだろう。

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伊勢物語

わするらむと思ふ心のうたがひに
ありしよりけに物ぞかなしき

私があなたのことを忘れるだろうと疑われたことが、以前そうであったよりもずっと悲しくなる。

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伊勢物語

中空に立ちゐる雲のあともなく
身のはかなくもなりにけるかな

中空にわき立つ壮大な雲が跡形もなく消えてすまうように、我が身が頼りなく空しくなってしまった。

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伊勢物語

憂きながら人をばえしも忘れねば
かつ恨みつつ猶ぞ恋しき

つれなくひどいと思いながらもあなたを忘れることができないので、一方では恨めしいと思いながらやはり恋しいのです。

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伊勢物語

あい見ては心ひとつをかはしまの
水の流れて絶えじとぞ思ふ

お互いに夫婦となったうえは心ひとつにして、川中の島で水が分かれ流れても、また合流して絶えることなく流れるように、二人の仲も耐えることのないようにしたい。

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伊勢物語

秋の夜の千夜を一夜になずらへて
八千夜し寝ばやあく時のあらむ

長い秋の夜を一夜と見立て、八千夜も共に寝れば飽きることもあるのだろうか。

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伊勢物語

秋の夜の千夜を一夜になせりとも
ことば残りてとりや鳴きなむ

長い秋の千夜を一夜にしたとしても、言葉は語りつくせないで夜明けを告げる鶏が鳴くことなってしまうでしょう。

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伊勢物語

筒井つの井筒にかけましまろがたけ
過ぎにけらしな妹見ざるまに

丸井戸の上に組んである井戸枠の高さに及ばなかった私の背丈も、あなたに会わないでいるうちに高くなったろう。

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伊勢物語

くらべこしふりわけ髪も肩すぎぬ
君ならずして誰かあぐべき

あなたとどちらか長いか、ずっとくらべていたおかっぱの髪も今では肩のあたりを過ぎて長くなってしまった。しかしあなたではなく、誰が私の髪上げをしてくれることができるだろうか。

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伊勢物語

風吹けば沖つ白浪たつた山
夜半にや君がひとりこゆらむ

風が吹くと沖に白波がたつように不安で心細い竜田山を夜中にあの方は一人で越えているのでしょうか。

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