古典和歌stream

伊勢物語

ちはやぶる神の斎垣も超えぬべし
大宮人の見まくほしさに

神様をかこっている周囲の垣をも超えてしまいそうです。宮廷からおいでになった方が見たくて。

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伊勢物語

恋しくは来ても見よかしちはやぶる
神のいさむる道ならなくに

恋しいのなら来てごらんなさい。恋は神様が禁止なさるものでもないのだから。

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伊勢物語

大淀の松はつらくもあらなくに
うらみてのみもかへるなみ哉

伊勢の国の大淀の海岸に生えている松は薄情ではないのに、浦辺にうちよせて海岸を見ただけで引き返す波であることよ

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伊勢物語

目には見て手にはとられぬ月のうつの
桂のごとき君にぞありける

目では見ながら手には取ることのできない月の中の桂のようなあなたである

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伊勢物語

岩ねふみ重なる山にあらねども
逢はぬ日おほく恋ひわたるかな

大きな岩を踏んで上る重なり続いた険しく深い山ではなく、逢いに行くのは簡単なはずなのに、逢わない日が多く、恋焦がれている

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伊勢物語

大淀の浜に生ふてふみるからに
心はなぎぬ語らはねども

大淀の浜に生えるという海松を見に行くと言葉を聞き、お目にかかっただけで私の心は安らかに落ち着きました。これ以上、睦言を交わさなくても

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伊勢物語

袖ぬれて海人の刈りほすわたつうみの
みるをあふにてやまむとする

袖を濡らして漁夫が刈り取って干す海松(みる)を思っているだけで、袖を涙で濡らしながら切に頼む私の顔を見るだけですませようとするのか。

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伊勢物語

岩間より生ふるみるめしつれなくは
潮干潮満ちかひもありなむ

岩の間から生えている海松布(みるめ)が変わることがないのは、潮がひいて行き、また満ちて来て貝がつくこともあるだろう。

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伊勢物語

涙にぞぬれつつしぼる世の人の
つらき心は袖のしづくか

私が涙で濡らした袖をしぼると、したたり落ちる雫はあなたの無情な心そのものか。

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伊勢物語

大原や小塩の山もけふこそは
神世のことも思ひ出づらめ

大原野において、この小塩山のふもとにある氏神様も、藤原氏出身の東宮の母の御息所が参拝になった今日のこの日には神代のことも思いだしているでしょう。

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伊勢物語

山のみなうつりてけふにあふ事は
春の別れをとふとなるべし

山が全て移動して来て今日の法要に参会するのは名残惜しい春の終わりの女御との別れを弔うためなのだろう。

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伊勢物語

あかねども岩にぞかふる色見えぬ
心を見せむよしのなければ

十分ではないが私の心をこの岩に代えてお見せします。外見にあらわすことのできない私の心をお見せしようにも方法がないので。

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伊勢物語

わが門に千尋ある影をうゑつれば
夏冬たれか隠れざるべき

我が家の門に大きな陰をつくる大木を植えたので夏の日差しが強い時、冬の風がつよく大雪の時、一門のこの木陰に隠れないだろうか。

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伊勢物語

濡れつつぞしひてをりつる年の内に
春はいくかもあらじと思へば

雨に濡れながら無理に藤の花が咲いている枝を折りました。今年のうちに春は幾日もないだろうと思ったので。

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伊勢物語

塩竃にいつかは来にけむ朝なぎに
釣りする舟はここに寄らなむ

塩竃(しおがま)にいつのまに来てしまったのであろうか。朝の風も吹かない海で魚釣りをする舟は、ここに寄って来て欲しい。

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伊勢物語

世の中にたえて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし

この世の中にまったく桜がなかったのならば春の人の心はのんびりとするだろうに。

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