古典和歌stream

伊勢物語

おほかたは月をもめでじこれぞこの
つもれば人の老となるもの

たいていの場合は美しい月を賞美することはない。この月こそが夜ごとにつもり重なれば年となって、積もりつもって人の老いになるのだから。

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伊勢物語

人知れず我こひ死なばあぢきなく
いづれの神になき名おほせる

誰にも事情を知られないまま私が恋い死んだなら、人々はどの神様に祟りだなどと無実の評判を負わせるだろう。

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伊勢物語

桜花けふこそかくもにほふとも
あなたのみがた明日の夜のこと

桜の花が今日はこんなにも美しく咲いても、明日の夜もきれい咲いているか頼りにすることができない

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伊勢物語

惜しめども春のかぎりのけふの日の
夕暮れにさへなりにけるかな

月日が経つのを惜しんでも、春の最後の今日という日の夕暮れにまでなってしまった。

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伊勢物語

芦辺こぐ棚なし小舟をいくそたび
行きかへるらむ知る人もなみ

芦(あし)の生えた岸辺を往来する棚板も張ってない小舟は、芦に隠れて誰にも知られず行ったり来たりしている。

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伊勢物語

あふなあふな思ひはすべしなぞへなく
高き卑しき苦しかりけり

身分に合わない恋をするがいい。身分の高い者と低い者との恋はまったく苦しいものだ。

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伊勢物語

秋の夜は春日わするるものなれや
かすみにきりや千重まさるらむ

秋の長い夜は過ぎ去った春のおだやかな日など忘れるのだろう。春の霞にくらべると秋の霧は千倍もまさって良いものだろうか。

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伊勢物語

千々の秋ひとつの春にむかはめや
紅葉も花もともにこそ散れ

多くの秋を合わせても一つの春にかなうでしょうか。でも秋の紅葉も春の花も、みな散っていきます。

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伊勢物語

彦星に恋はまさりぬ天の河
へだつる関を今はやめてよ

一年に一夜しか織姫に逢えぬ彦星よりも私があなたを恋する気持ちはまさっている。天の川のように二人を隔てる関所のような仕切りを今はやめてくれ。

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伊勢物語

秋かけていひしながらもあらなくに
木の葉ふりしくえにこそありけれ

けっして秋を飽きるという意味の掛詞として言ったのでもないのに、結局秋になって木の葉が降り積もり入り江が浅くなるような浅い縁だったのですね。

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伊勢物語

桜花ちりかひくもれ老いらくの
来むといふなる道まがふがに

桜の花よ、散り乱れてあたりを曇らせてくれ。老いることがやってくるであろう道がわからなくなるように。

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伊勢物語

わがたのむ君がためにと折る花は
時しもわかぬものにぞありける

私がたよりにしている主人のためにと思って手折る花は、時節も関係なく、いつも咲いている。

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伊勢物語

見ずもあらず見もせぬ人の恋しくは
あやなく今日やながめ暮らさむ

見ないというのではなく、かといってはっきり見たのではない、あなたが恋しくて、わけもなく今日は一日中ぼんやりそちらの方を眺めて過ごすか。

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伊勢物語

知る知らぬなにかあやなくわきていはむ
思ひのみこそしるべなりけれ

見知るとか知らないとか、どうしてわけもなく区別して言うのか。知り合って逢えるのは思いだけが道しるべになるものだ。

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伊勢物語

忘れ草生ふる野べとは見るらめど
こは忍ぶなり後もたのまむ

忘れ草が生い茂る野辺と見るだろうが、これは忍ぶ草でこれから後も頼りにするつもりだ。

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伊勢物語

咲く花の下にかくるる人を多み
ありしにまさる藤のかげかも

大きく美しく咲く花房のかげに入る人が多いので、さらに立派に見える藤の花のかげであることだ。

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