古典和歌stream

伊勢物語

散ればこそいとど桜はめでたけれ
うき世になにか久しかるべき

散るからこそ桜は素晴らしいのだ。この憂いの多い世の中に何が久しくあるだろうか。

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伊勢物語

狩り暮らしたなばたつめに宿からむ
天の河原に我は来にけり

一日中狩りをして日暮れになった。機織(はたおり)の女に宿を借りよう。天の河原に私は来ていた。

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伊勢物語

一年に一度来ます君まてば
宿かす人もあらじとぞ思ふ

機織の女は一年に一度やって来る大切な方を待っているのだから、宿を貸してくれる人はいないだろうと思う。

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伊勢物語

あかなくにまだきも月のかくるるか
山の端にげて入れずもあらなむ

まだ飽きてはいないのに早くも月が隠れるのだろうか。山の尾根が逃げて月を入れないでいてほしいものだ。

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伊勢物語

おしなべて峰もたひらになりななむ
山の端なくは月も入らじ

どこも峰が平らになってしまってほしい。山の端がなければ月もそのかげに入らないだろう。

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伊勢物語

枕とて草ひき結ぶこともせじ
秋の夜とだにたのまれなくに

旅先で仮寝をするために枕として草を結びあわせるつもりはない。秋の夜長もたのみにできない夜なのだから。

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伊勢物語

忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや
ゆきふみわけて君を見むとは

現実のことを忘れて、今のことを夢かと思う。深い雪を踏み分けて、わび住まいをするあなたにお目にかかろうとは。

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伊勢物語

老いぬればさらぬ別れのありといへば
いよいよみまくほしき君かな

すっかり年をとってしまったので、避けようのない死別があるからますます会いたいあなたであることよ。

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伊勢物語

世の中にさらぬ別れのなくもがな
千よもといのる人の子のために

この世の中に避けることができない別れが無ければよいのに。人の子であるのだから親が千年でも生きて欲しいと祈る。

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伊勢物語

思へども身をしわけねばめかれせぬ
雪のつもるぞわが心なる

大切に思い慕っていても私の体は二つに分けることができないので、目も離せないぐらい降りしきる雪が積もって帰れなくなってしまったことこそ君の側にとどまる口実ができて私の本心が望むところです。

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伊勢物語

今までに忘れぬ人は世にもあらじ
おのがさまざま年の経ぬれば

長く年月がたった今まで忘れなかった人はいないだろう。おのおのがいろいろな生活を送り年がたってしまったのだから。

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伊勢物語

芦の屋のなだの塩焼きいとまなみ
黄楊の小櫛もささず来にけり

芦屋の灘の海辺で塩を焼く海人は、製塩の仕事が忙しく暇がないので黄楊(つげ)の櫛もささないで来たことだ。

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伊勢物語

わが世をばけふかあすかと待つかひの
なみだの滝といづれ高けむ

世が自分の思いのままになるのが今日か明日かと待つかいもなく流れ落ちる涙の滝とこの滝とどちらが高いだろうか。

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伊勢物語

ぬき乱る人こそあるらし白玉の
まなくも散るか袖のせばきに

この滝の上で玉をつないだ紐をぬいて、玉をばらばらにしている人がいるらしい。受け取る袖はせまく、こぼれてしまうのに玉が絶え間なく乱れ飛び散る。

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伊勢物語

晴るる夜の星か河辺の蛍かも
わが住むかたの海人のたく火か

あのたくさんの明かりは、晴れた夜の星だろうか、河辺の蛍だろうか。それとも私が住むほうの漁師が夜釣りのために灯した漁火だろうか。

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伊勢物語

渡つ海のかざしにさすといはふ藻も
君がためには惜しまざりけり

海の神様が髪飾りにして挿すための大切な海藻も、あなた様のためには惜しまなかった。

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