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君のみや野辺に小松を引きにゆく
我もかたみに摘まむ若菜を

歌の意味
あなただけが野辺に小松を引きに行くのだろうか。いや、私もお互いさまに若菜を摘もう。
鑑賞
巻第一 春歌上 7

詞書「子日に男のもとより、今日は小松引きになん罷り出づると言へりければ」
 子の日に小松引きに出かけると知らせてきた男に対し、自分も負けずに若菜を摘もうと応じた歌である。あなただけが楽しむのではないと張り合う気持ちが、軽やかに表れている。
 詞書によれば、子の日に男から今日は小松引きに出かけると言ってきたので、それに答えた歌である。男が小松を引き、自分は若菜を摘むという対になっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「君のみや」の「や」は反語の係助詞で、あなただけが行くのだろうか、いやそうではない、という意を表す。三句の連体形「ゆく」と係り結びをなす。
 二句「野辺に小松を」は、子の日の行事である小松引きを示す。前歌の第六首の「松」を受け継いでいる。
 三句「引きにゆく」は、初句の「や」を受けて連体形で結び、ここで句切れとなる。
 四句「我もかたみに」の「かたみに」は、互いにの意で、若菜を入れる籠の「筐(かたみ)」を掛けている。
 結句「摘まむ若菜を」は倒置で、若菜を摘もうという意志を強く示している。

かたみ:互いにの意と、若菜を入れる籠の「筐」を掛ける
こまつ:子の日に引く小さな松
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
まつに来る人しなければ春の野の 若菜も何もかひなかりけり
次の歌
霞立つ春日の野辺の若菜にも なり見てしかな人も摘むやと