声立てて泣きぞしぬべき秋霧に
友まどはせる鹿にはあらねど
- 歌の意味
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声を立てて泣いてしまいそうだ。秋霧の中で友を見失った鹿ではないけれど。
- 鑑賞
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巻第七 秋歌下 372
詞書「題しらず」
秋霧の中で友を見失って鳴く鹿ではないけれど、私も声を立てて泣いてしまいそうだと詠んだ歌である。霧に友を見失って鳴く鹿に、心細く泣きたい思いを重ねている。
本巻の第三百七十二首と第三百七十三首は、鹿の鳴き声を詠む歌が二首並んでいる。
作者の紀友則は紀有朋の子で、紀貫之の従兄にあたる。古今和歌集の撰者の一人であったが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「久方の光のどけき春の日に」の歌が採られている。
初句「声立てて」は、声を立てて、の意である。
二句「泣きぞしぬべき」の「ぬべし」は、きっと、の意を表し、きっと泣いてしまうだろう、の意である。係助詞「ぞ」と連体形「べき」が係り結びをなし、ここで句切れとなる。
三句「秋霧に」は、秋霧の中で、の意である。
四句「友まどはせる」の「まどはす」は、見失う意で、友を見失った、の意である。
結句「鹿にはあらねど」は、鹿ではないけれど、の意で、二句と倒置の関係にあり、泣きたくなる自分を鹿になぞらえている。
まどはす:見失う、迷わせる
- 作者
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紀友則
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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いづれをかわきてしのばん秋の野に うつろはんとて色変はる草
- 次の歌
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誰聞けと声白妙にさを鹿の ながながし夜をひとり鳴くらん