誰聞けと声白妙にさを鹿の
ながながし夜をひとり鳴くらん
- 歌の意味
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誰に聞けといって、牡鹿は声を白々と澄みわたらせて、長い長い夜をひとりで鳴いているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第七 秋歌下 373
詞書「題しらず」
牡鹿は誰に聞けといって、長い長い秋の夜を、ひとりで鳴いているのだろうかと詠んだ歌である。妻を求めて夜通し鳴く鹿の声に、ひとり寝のさびしさを重ねている。
柿本人麻呂の作と伝える「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」と同じく、「ながながし夜」を「ひとり」で過ごすさびしさを詠んでいる。前歌に続いて鹿を詠む歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
なお本文の二句は「声白妙に」とあり、読み仮名の行の「こゑたかさこに」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「誰聞けと」は、誰に聞けといって、の意である。本巻の第三百六十一首も同じ初句で、雁の声を詠んでいる。
二句「声白妙に」の「白妙」は、白い布のことで、ここでは声が白々と澄みわたるさまにたとえている。読み仮名の行の「高砂」によれば、鹿の名所の高砂で声高く、の意となる。
三句「さを鹿の」は、牡鹿が、の意である。
四句「ながながし夜を」は、長い長い夜を、の意で、秋の夜長を強調している。
結句「ひとり鳴くらん」の「らん」は原因を推量する助動詞で、初句の疑問を受け、ひとりで鳴いているのだろうか、の意である。
しろたへ:楮などの繊維で織った白い布、また白い色
さをしか:牡鹿
たかさご:播磨の国の地名、鹿や松の名所
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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声立てて泣きぞしぬべき秋霧に 友まどはせる鹿にはあらねど
- 次の歌
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打ち延へて影とぞたのむ峰の松 色とる秋の風にうつるな