打ち延へて影とぞたのむ峰の松
色とる秋の風にうつるな
- 歌の意味
-
いつまでも変わらぬ陰として頼みにしている峰の松よ。草木の色を奪っていく秋の風に、移ろってくれるな。
- 鑑賞
-
巻第七 秋歌下 374
詞書「題しらず」
いつまでも変わらぬ陰と頼みにしている峰の松よ、草木の色を奪っていく秋風に、色を移してくれるなと詠んだ歌である。常緑の松に、頼みとする人がいつまでも心変わりしないようにとの願いを重ねている。
前の歌までが色を変える草木を詠んだのに対し、本歌は色を変えない松に、色を変えないでほしいと呼びかけている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「打ち延へて」は、長く続けて、いつまでも、の意である。
二句「影とぞたのむ」の「影」は、身を寄せる陰、庇護の意で、係助詞「ぞ」と連体形「たのむ」が係り結びをなし、陰として頼みにしている、の意である。
三句「峰の松」は、峰に立つ松で、常緑で色を変えないものとして詠まれている。ここで句切れとなる。
四句「色とる秋の」は、草木の色を奪っていく秋の、の意である。
結句「風にうつるな」の「うつる」は、色が変わる、心が移る意で、「な」は禁止の終助詞である。秋風に色を移してくれるな、の意である。
うちはふ:長く続ける、延ばす
かげ:身を寄せる陰、庇護
うつる:色が変わる、心が移る
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
誰聞けと声白妙にさを鹿の ながながし夜をひとり鳴くらん
- 次の歌
-
初時雨降れば山辺ぞ思ほゆる いづれの方かまづもみづらん