古典和歌stream

思ふとていとこそ人に慣れざらめ
しか慣らひてぞ見ねば恋しき

歌の意味
恋しく思うからといって、それほど人に慣れ親しむまい。そのように慣れてしまったからこそ、逢わないと恋しいのだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 900

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 恋しく思うからといって、あまり人に慣れ親しむべきではない、慣れてしまったからこそ、逢わないでいると恋しくてたまらないのだと詠む歌である。親しみが深まるほど逢えない時の恋しさも増すという、恋の心の道理を述べている。

 初句「思ふとて」は、恋しく思うからといって、の意である。
 二句「いとこそ人に」は、それほど人に、の意で、「いと」は、たいそう、の意、係助詞「こそ」が強調している。前歌の第八百九十九首の「白糸」を受けるように、「いと」の音が置かれている。
 三句「慣れざらめ」は、慣れ親しむまい、の意で、係助詞「こそ」を受けて推量の助動詞「む」の已然形「め」で結んでいる。ここで句切れとなる。
 四句「しか慣らひてぞ」は、そのように慣れてしまったからこそ、の意で、「しか」は、そのように、の意である。三句の「慣れ」と四句の「慣らひ」で、慣れることを重ねている。次歌の第九百一首の「ならはし」と、慣れを詠む二首が並んでいる。
 結句「見ねば恋しき」は、逢わないと恋しい、の意で、係助詞「ぞ」を受けて形容詞「恋し」の連体形で結んでいる。

ならふ:慣らふ。慣れる。習慣となる
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
憂かりけるふしをば捨てて白糸の 今くる人と思ひなさなん
次の歌
手枕のすきまの風も寒かりき 身はならはしのものにぞありける