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苔むさば拾ひもかへむさざれ石の
数をみな取る齢幾世ぞ

歌の意味
さざれ石に苔が生したならば、また拾い替えもしよう。そのさざれ石の数をすべて取り尽くすほどのお年は、いったい幾世になるのだろうか。
鑑賞
巻第十八 雑賀 1163

詞書「東宮の石などりの石召しければ、三十一をつつみて、一つに一文字を書きて参らせける」
 さざれ石に苔が生したらまた拾い替えもしよう、そのさざれ石の数をすべて取り尽くすほどの齢は幾世になるだろうかと詠む歌である。詞書から、東宮が石などりの遊びに使う石を求めたので、三十一の石を包み、一つに一文字ずつ書いて献上したとわかる。三十一の石に一文字ずつ書けば、それがそのまま三十一文字の一首となる趣向で、石の数を東宮の齢に重ね、限りない長寿を祝っている。
 古今和歌集の賀の歌「我が君は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」と同じく、さざれ石と苔によって長い年月を表している。

 初句「苔むさば」は、苔が生したならば、の意で、「ば」は未然形について仮定を表す。さざれ石に苔が生すほどの長い年月をいう。
 二句「拾ひもかへむ」は、拾い替えもしよう、の意で、苔むした石に代えて新しい石を拾い、遊びを続けようという意をいう。ここで句切れとなる二句切れの歌である。
 三句「さざれ石の」は、小さな石の、の意で、六音の字余りの句である。前歌の第千百六十二首の結句「真砂なりけり」と、砂や小石の数で齢を数える趣向を共有している。
 四句「数をみな取る」は、数をすべて取り尽くす、の意で、石などりの遊びで石を取ることに、齢を重ねることを重ねている。
 結句「齢幾世ぞ」は、齢は幾世になるのか、の意で、「ぞ」は文末で問いを強める。体言で結び、限りない長寿をたたえている。

いしなどり:石などり。小石を投げ上げて受け取る子どもの遊び
さざれいし:さざれ石。小さな石
こけむす:苔むす。苔が生える
よはひ:齢。年齢
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
万代を数へむ物は紀の国の 千尋の浜の真砂なりけり
次の歌
松の根に出づる泉の水なれば 同じき物を絶えじとぞ思ふ