驚かす音こそ夜の小山田は
人なきよりも寂しかりけれ
- 歌の意味
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夜の山あいの田では、獣を追い払うために鳴らす音こそが、人のいないことよりもかえって寂しいものだった。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 326
詞書「題しらず」
夜の山あいの田で、獣を驚かして追い払うために鳴らす引板の音を聞いて、その音こそが、人の気配がまったくないことよりもかえって寂しい、と詠む。静けさよりも、人が鳴らす音の方が寂しさをかき立てるという逆説によって、夜の田の寂しさを表している。
作者の「よみ人しらず」は、作者の名が伝わらないことを示す。
本巻の鹿の歌の一連に続いて、秋の田を詠む歌が二首置かれる。次歌の第三百二十七首も引板の音に「驚きて」鴫が飛び立つさまを詠み、本歌の「驚かす」と呼応する。
初句「驚かす」は、物音を立てて鳥や獣を驚かし追い払うことをいう。田に仕掛けた引板などの音を指す。次歌の第三百二十七首の「驚きて」と対をなし、驚かす側と驚く側とが並ぶ。
二句「音こそ夜の」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けれ」と已然形で結ぶ係り結びである。ほかならぬその音こそ、と強める。
三句「小山田は」の「小山田」は山あいにある小さな田である。
四句「人なきよりも」は、人がいないことよりも、の意で、無人の静けさと比べる。
結句「寂しかりけれ」は、二句の「こそ」を受けて已然形で結ぶ。「けり」は気づきの詠嘆で、かえって寂しいものだった、と結ぶ。
をやまだ:山あいにある小さな田
おどろかす:物音を立てて驚かし、追い払う
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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尾上より門田に通ふ秋風に 稲葉を渡るさを鹿の声
- 次の歌
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我が門の晩稲の引板に驚きて むろの刈田に鴫ぞ立つなる