物思ふと行きても見ねばたかかたの
海人の苫屋は朽ちやしぬらん
- 歌の意味
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物思いに沈んで、行って見ることもしないので、たかかたの海人の苫屋は、朽ちてしまったのではないだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1193
詞書「播磨国にたかかたといふ所に、おもしろき家持ちて侍りけるを、京にて母が思ひにて久しうまからで、かのたかかたに侍りける人に言ひつかはしける」
物思いに沈んで行ってもみないので、たかかたの海人の苫屋は朽ちてしまっただろうか、と詠んだ歌である。母の喪に服して久しく訪れていない播磨の家を、海辺の粗末な苫屋になぞらえて案じ、その地にいる人に寄せている。
詞書によれば、播磨国のたかかたという所に趣のある家を持っていたが、京で母の喪に服していて長く行かずにいたので、そのたかかたにいる人に言い送った歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「物思ふと」は、物思いに沈んで、の意で、字余りとなっている。母の喪の悲しみをいう。
二句「行きても見ねば」は、行って見ることもしないので、の意である。
三句「たかかたの」は、播磨国の地名たかかたの、の意である。
四句「海人の苫屋は」は、漁師の住む苫ぶきの小屋は、の意で、自分の家を謙遜してたとえている。
結句「朽ちやしぬらん」は、朽ちてしまったのだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。
とまや:菅や茅で編んだ苫でふいた粗末な小屋
あま:漁師
おもひ:喪に服すること
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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あはれてふ事に慰む世の中を などか昔と言ひて過ぐらん
- 次の歌
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夢にだにうれしとも見ばうつつにて わびしきよりはなほまさりなん