あはれてふ事に慰む世の中を
などか昔と言ひて過ぐらん
- 歌の意味
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「あわれ」という言葉に慰められているこの世の中を、どうして昔はよかったなどと言って過ごしているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1192
詞書「題しらず」
「あわれ」という言葉に慰められる世の中なのに、どうして昔をしのんでばかり過ごすのか、と詠んだ歌である。今の世にも心を動かされ慰められることはあるのに、人はなぜ昔を恋しがってばかりいるのかと、懐旧に傾く心をいぶかっている。歌意には解釈の分かれる点が残る。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「あはれてふ」は、「あわれ」という、の意で、本巻の第千百七十九首の初句と同じ句である。前歌の初句「あはれとも」とも響き合っている。
二句「事に慰む」は、言葉に慰められる、の意である。
三句「世の中を」は、世の中であるのに、の意で、「を」は逆接の気持ちを含んでいる。
四句「などか昔と」は、どうして昔と、の意で、「か」は疑問の係助詞で、結句の連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「言ひて過ぐらん」は、言って過ごしているのだろうか、の意で、「らん」は現在の原因推量の助動詞で、四句の「か」を受けて結んでいる。
なぐさむ:心が晴れる。気が紛れる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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あはれとも憂しとも言はじかげろふの あるかなきかに消ぬる世なれば
- 次の歌
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物思ふと行きても見ねばたかかたの 海人の苫屋は朽ちやしぬらん