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あはれとも憂しとも言はじかげろふの
あるかなきかに消ぬる世なれば

歌の意味
しみじみいとしいとも、つらいとも言うまい。かげろうのように、あるかないかのうちに消えてしまう世なのだから。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1191

詞書「題しらず」
 あわれとも憂しとも言うまい、かげろうのようにあるかなきかのうちに消える世なのだから、と詠んだ歌である。はかない世に心を動かしても仕方がないと、喜びも嘆きも口にしない諦観を述べている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「あはれとも」は、しみじみいとしいとも、の意で、次歌の初句「あはれてふ」と同じ語で始まっている。
 二句「憂しとも言はじ」は、つらいとも言うまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。ここで句切れとなる。
 三句「かげろふの」は、かげろうのように、の意で、はかないもののたとえである。
 四句「あるかなきかに」は、あるのかないのかわからないうちに、の意である。
 結句「消ぬる世なれば」は、消えてしまう世であるので、の意で、二句の理由を後から添える倒置となっている。

かげろふ:陽炎、または虫の蜉蝣。はかないもののたとえ
く:消える
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
思ひ出づる時ぞかなしき世の中は 空行く雲の果てを知らねば
次の歌
あはれてふ事に慰む世の中を などか昔と言ひて過ぐらん