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夢にだにうれしとも見ばうつつにて
わびしきよりはなほまさりなん

歌の意味
せめて夢の中でだけでも、うれしいことを見られたなら、現実においてわびしくしているよりは、やはりまさっているだろう。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1194

詞書「延喜御時、時の蔵人のもとに、奏しもせよとおぼしくてつかはしける」
 せめて夢の中でもうれしいことを見られたら、現実にわびしくしているよりはまさるだろう、と詠んだ歌である。現実には不遇のわびしさばかりで、夢でもよいから喜びを得たいと嘆き、帝への取り次ぎを期待して蔵人に寄せている。
 詞書によれば、醍醐天皇の延喜の御代に、当時の蔵人のもとに、帝にも申し上げてほしいという気持ちで送った歌である。雑歌二の巻末歌で、巻頭の第千百二十五首が太政大臣に不遇を訴える歌で始まったのに対し、帝への取りなしを願う不遇の嘆きで巻を閉じ、述懐の歌が巻の初めと終わりを結んでいる。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、三十六歌仙に数えられる。小倉百人一首には「心あてに折らばや折らむ初霜の」の歌が採られている。

 初句「夢にだに」は、せめて夢の中でだけでも、の意で、「だに」は最小限の願いを表す。
 二句「うれしとも見ば」は、うれしいことを見たならば、の意で、「ば」は仮定を表す。
 三句「うつつにて」は、現実において、の意で、初句の「夢」と対をなしている。
 四句「わびしきよりは」は、わびしい思いをしているよりは、の意で、不遇の身のつらさをいう。
 結句「なほまさりなん」は、やはりまさっているだろう、の意で、「なん」は強い推量を表す。夢にさえ喜びを求める不遇の嘆きで巻を結んでいる。

うつつ:現実
そうす:天皇に申し上げる
くらうど:天皇の側近として雑事を務める蔵人所の職員
作者
凡河内躬恒
出典
後撰和歌集
前の歌
物思ふと行きても見ねばたかかたの 海人の苫屋は朽ちやしぬらん
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岩の上に旅寝をすればいと寒し 音の衣を我に貸さなん