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初時雨降れば山辺ぞ思ほゆる
いづれの方かまづもみづらん

歌の意味
初時雨が降ると、山のあたりのことが思われる。どちらの方がまず紅葉しているだろうか。
鑑賞
巻第七 秋歌下 375

詞書「題しらず」
 その秋はじめての時雨が降ると、山のあたりのことが思われ、どちらの方角の山がまず紅葉しているだろうかと詠んだ歌である。時雨が木の葉を染めるという考えを踏まえ、紅葉の始まりに心を寄せている。
 本歌から紅葉を詠む歌が続いていく。巻頭の第三百五十一首が時雨に濡れる藤袴を詠んだのに対し、本歌は時雨から山の紅葉へと思いを移している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「初時雨」は、その秋はじめて降る時雨のことである。
 二句「降れば山辺ぞ」は、降ると山のあたりが、の意で、「ぞ」は係助詞である。
 三句「思ほゆる」は、自然と思われる、の意で、二句の「ぞ」と連体形「思ほゆる」が係り結びをなす。ここで句切れとなる。
 四句「いづれの方か」は、どちらの方角が、の意で、「か」は疑問の係助詞である。
 結句「まづもみづらん」の「もみづ」は紅葉する意で、まず紅葉しているだろうか、の意である。四句の「か」と連体形「らん」が係り結びをなしている。

はつしぐれ:その年の秋はじめて降る時雨
もみづ:草木の葉が赤や黄に色づく
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
打ち延へて影とぞたのむ峰の松 色とる秋の風にうつるな
次の歌
妹が紐解くと結ぶとたつた山 今ぞ紅葉の錦織りける