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雫もて齢延ぶてふ花なれば
千代の秋にぞ影は繁らん

歌の意味
その雫によって寿命が延びるという花なので、千年の秋にまで、その影は茂るだろう。
鑑賞
巻第七 秋歌下 433

詞書「返し」
 菊はその雫によって寿命が延びるという花なので、千年先の秋まで、その影は茂り続けるだろうと返した歌である。前歌の嘆きに対し、菊の長寿の徳を引いて、あなたの行く末は栄えるだろうと励ましている。
 前歌の第四百三十二首と贈答をなす。前歌が「果ては影なく」と嘆いたのに対し、本歌は「影は繁らん」と応じ、衰えを栄えへと言い換えている。菊の露を飲んで長寿を得たという中国の故事を踏まえている。
 作者の「とものり」は紀友則である。紀有朋の子で、紀貫之の従兄にあたる。古今和歌集の撰者の一人であったが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「久方の光のどけき春の日に」の歌が採られている。

 初句「雫もて」は、その雫によって、の意で、菊の露を指している。
 二句「齢延ぶてふ」の「てふ」は「といふ」のつづまった形で、寿命が延びるという、の意である。
 三句「花なれば」は、花なので、の意である。
 四句「千代の秋にぞ」は、千年の秋にまで、の意で、「ぞ」は係助詞である。
 結句「影は繁らん」は、その影は茂るだろう、の意で、四句の「ぞ」と連体形「ん」が係り結びをなす。前歌の結句「影なくなりぬ」に対し、「影は繁らん」と応じている。

てふ:「といふ」のつづまった形
よはひ:年齢、寿命
作者
紀友則
出典
後撰和歌集
前の歌
枝も葉もうつろふ秋の花見れば 果ては影なくなりぬべらなり
次の歌
秋の月光さやけみ紅葉葉の 落つる影さへ見えわたるかな