古典和歌stream

絵にかける鳥とも人を見てしがな
同じ所を常にとふべく

歌の意味
あなたを、絵に描いた鳥だと見なしたいものだ。そうすれば、鳥がいつも同じ所を飛ぶように、あなたもいつも同じ所を訪れてくれるだろうから。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 709

詞書「時々見えける男の、ゐる所の障子に鳥のかたを描きつけて侍りければ、あたりに押しつけ侍りける」
 あなたを絵に描いた鳥と見たい、そうすればいつも同じ所を訪れてくれるだろう、と詠んだ歌である。絵の鳥がいつまでも同じ場所にいることに寄せて、時々しか来ない男にいつも訪れてほしいと願っている。
 詞書によれば、時々しか訪れない男が、女の居所の障子に鳥の絵を描きつけたので、そのそばに貼りつけた歌である。
 作者の本院侍従は、本院侍従と呼ばれた女房で、家集に『本院侍従集』がある。藤原兼通らとの恋の贈答で知られる。

 初句「絵にかける」は、絵に描いてある、の意である。
 二句「鳥とも人を」は、鳥だとでもあなたを、の意である。
 三句「見てしがな」は、見たいものだ、の意で、「てしがな」は願望を表す。ここで句切れとなる。
 四句「同じ所を」は、同じ場所を、の意で、絵の鳥がいつも同じ所にいることをいう。
 結句「常にとふべく」は、いつも訪れるように、の意で、「とふ」は鳥が「飛ぶ」と人が「訪ふ」を掛ける掛詞である。三句と倒置の関係にある。

さうじ:襖や衝立などの建具
とふ:人が「訪ふ」意と、鳥が「飛ぶ」意を掛ける
作者
本院侍従
出典
後撰和歌集
前の歌
死ぬ死ぬと聞く聞くだにも逢ひ見ねば 命をいつの世にか残さん
次の歌
昔せし我がかね言の悲しきは いかに契りしなごりなるらん