それならぬこともありしを忘れねと
言ひしばかりを耳にとめけん
- 歌の意味
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ほかのことも言ったはずなのに、忘れてほしいと言ったことばかりを、どうして耳にとどめたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十九 雑恋 1263
詞書「一条摂政下臈に侍りける時、承香殿女御に侍りける女に忍びて物言ひ侍りけるに、さらにな訪ひそと言ひて侍りければ、契りしことありしかばなど言ひ遣はしたりければ」
ほかのことも言ったのに、忘れてほしいと言ったことばかりを、どうして耳にとどめたのかと詠む歌である。詞書から、一条摂政藤原伊尹がまだ官位の低かった頃、承香殿女御に仕える女と忍んで言い交わしていたが、女が決して訪ねて来ないでと言ったので、伊尹が、契りを交わしたこともあったのにと言い送り、それに女が答えた歌とわかる。突き放したのは自分なのに、その言葉だけを聞き入れて身を引こうとする相手を恨み、本心は別にあったことをほのめかしている。
作者の本院侍従は、村上天皇の頃に宮仕えした女房で、多くの貴公子と恋の贈答を交わした。中古三十六歌仙の一人である。
初句「それならぬ」は、それではない、ほかの、の意である。
二句「こともありしを」は、ことも言ったのに、の意で、「を」は逆接の接続助詞である。
三句「忘れねと」は、忘れてしまってほしいと、の意で、「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形である。
四句「言ひしばかりを」は、言ったことばかりを、の意で、「ばかり」は限定を表す。
結句「耳にとめけん」は、耳にとどめたのだろうか、の意で、「けん」は過去の原因を推量する助動詞である。
げらふ:下臈。官位の低い者
ちぎる:契る。約束する、言い交わす
- 作者
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本院侍従
- 出典
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拾遺和歌集
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石見潟なにかはつらきつらからば うらみがてらに来ても見よかし
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御狩する駒のつまづく青つづら 君こそ我はほだしなりけれ