墨染の鞍馬の山に入る人は
たどるたどるも帰り来ななん
- 歌の意味
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墨染めの衣のように暗い鞍馬の山に入っていく人は、暗い道をたどりたどりしてでも、きっと帰って来てほしい。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 832
詞書「浄蔵鞍馬の山へなん入ると言へりければ」
墨染めの鞍馬の山に入る人は、たどりたどりしてでも帰って来てほしい、と詠んだ歌である。修行のため山に籠もろうとする恋人に、暗い山道を手探りしてでも帰ってきてほしいと切に願っている。
詞書によれば、浄蔵が鞍馬の山へ入ると言ってきたときの歌である。浄蔵は三善清行の子の僧で、作者との恋は大和物語にも語られている。本巻の第八百六十七首の「くらぶの山」も、鞍馬山の古名とされる暗部山を詠んでいる。
作者の「なかきがむすめ」は平中興女である。平中興の娘で、父の中興は国守などを務めた官人である。大和物語には僧浄蔵との恋が語られている。
初句「墨染の」は、墨で染めたような黒い色の、の意で、僧衣の色を表すとともに、「鞍馬」の「くら」に暗い意を響かせている。
二句「鞍馬の山に」は、山城の鞍馬山に、の意で、「暗」の意を響かせている。
三句「入る人は」は、山に入っていく人は、の意で、浄蔵を指している。
四句「たどるたどるも」は、道を探りながら、たどりたどりしてでも、の意で、暗い山道を手探りで進むさまを表している。
結句「帰り来ななん」は、帰って来てほしい、の意で、「な」は強意、「なん」は他に対する願望を表す。
すみぞめ:墨で染めたような黒い色、僧衣の色
くらま:山城の鞍馬山。「暗」の意を響かせる
たどる:道を探りながら進む
- 作者
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平中興女
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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世の常の人の心をまだ見ねば 何かこのたび消ぬべきものを
- 次の歌
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日を経ても影に見ゆるは玉かづら つらきながらも絶えぬなりけり