世の常の人の心をまだ見ねば
何かこのたび消ぬべきものを
- 歌の意味
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世の常だという人の心変わりを、私はまだ知らなかったので、どうして今度のことでこれほど消え入りそうになるのかと思うのだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 831
詞書「返し」
世の常の人の心をまだ知らないので、どうして今度のことで消え入りそうになるのか、と詠んだ歌である。心変わりは世の常だと慰めた相手に対し、自分はそれを初めて知ったので、これほど深く嘆くのだと応じている。
前歌の第八百三十首への返しである。前歌の結句「世の常」を初句に受けて応じている。
作者の伊勢は、藤原継蔭の娘である。宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の寵を受けた。のちに敦慶親王との間に中務をもうけた。三十六歌仙の一人である。
初句「世の常の」は、世間並みの、の意で、前歌の結句「世の常」を受けている。
二句「人の心を」は、人の心変わりを、の意である。
三句「まだ見ねば」は、まだ見たことがないので、の意で、「ば」は確定の条件を表す。
四句「何かこのたび」は、どうして今度のことで、の意で、「か」は疑問を表す。
結句「消ぬべきものを」は、消え入りそうになるのか、の意で、「べき」は当然、「ものを」は詠嘆を込めた逆接を表す。
く:消える。「消ぬべき」は消えてしまいそうな、の意
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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ひたふるに思ひなわびそ古さるる 人の心はそれぞ世の常
- 次の歌
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墨染の鞍馬の山に入る人は たどるたどるも帰り来ななん