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おぼつかないづこなるらん虫の音を
尋ねば草の露や乱れん

歌の意味
はっきりしない。どこにいるのだろう。虫の声を探し求めて分け入れば、草に置いた露が乱れてしまうだろうか。
鑑賞
巻第三 秋歌 178

詞書「廉義公家にて、草むらの夜の虫といふ題を詠み侍りける」
 夜の草むらで鳴く虫の居場所がはっきりせず、その声を探して分け入れば、草に置く露が乱れ散ってしまうだろうかとためらう歌である。虫の声にひかれる心と、美しい露を損ないたくない心との間の揺れを表している。詞書によれば、廉義公すなわち藤原頼忠の家で、草むらの夜の虫という題で詠んだ歌である。
 作者の「藤原為頼」は、平安時代中期の歌人で、藤原雅正の子である。紫式部の伯父にあたる。

 初句「おぼつかな」は、はっきりしない、の意で、形容詞の語幹による詠嘆である。本歌から虫を詠む歌が続き、その一連の始まりとなる。
 二句「いづこなるらん」は、どこにいるのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞である。ここで句切れとなる。
 三句「虫の音を」は、虫の鳴き声を、の意である。
 四句「尋ねば草の」は、探し求めたならば草の、の意で、「ば」は仮定条件を表す。
 結句「露や乱れん」は、露が乱れるだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞であり、推量の助動詞「ん」の連体形で結ぶ。

むしのね:虫の鳴き声。虫の音
れんぎこう:藤原頼忠の諡号。廉義公
作者
藤原為頼
出典
拾遺和歌集
前の歌
夜もすがら見てを明かさむ秋の月 今宵の空に雲なからなん
次の歌
いづこにも草の枕をすずむしは ここを旅とも思はざらなん