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夜もすがら見てを明かさむ秋の月
今宵の空に雲なからなん

歌の意味
一晩中見て夜を明かそう、秋の月を。今夜の空に雲がなければよいのだが。
鑑賞
巻第三 秋歌 177

詞書「題しらず」
 秋の名月を一晩中見て夜を明かそうと思い、今夜の空に雲がかからないでほしいと願う歌である。名月を余すところなく眺めたいという素直な心が表れている。
 作者の「かねもり」は平兼盛である。光孝天皇の流れをくむ平氏の出で、平安時代中期の歌人である。天徳四年の内裏歌合での活躍で知られ、三十六歌仙に数えられる。

 初句「夜もすがら」は、一晩中、の意である。本文では「終夜」の字を当てている。
 二句「見てを明かさむ」は、見て夜を明かそう、の意で、「を」は強意の間投助詞、「む」は意志の助動詞である。
 三句「秋の月」は、見続けようとする名月をいう。ここで句切れとなる。
 四句「今宵の空に」は、今夜の空に、の意で、前歌の「今宵の月」を受ける。
 結句「雲なからなん」は、雲がなければよいのに、の意で、「なん」は他に対する願望の終助詞である。前歌が月はどこででも見えると詠んだのに対し、本歌は雲が月を隠すことを恐れており、見える月と隠される月への懸念とが対をなしている。月を詠む一連は本歌で結ばれる。

よもすがら:一晩中。夜通し
作者
平兼盛
出典
拾遺和歌集
前の歌
いづこにか今宵の月の見えざらん 飽かぬは人の心なりけり
次の歌
おぼつかないづこなるらん虫の音を 尋ねば草の露や乱れん