雨止まぬ軒の玉水数知らず
恋しきことのまさるころかな
- 歌の意味
-
雨のやまない軒から落ちる玉のような雫が数知れないように、数知れず恋しさがまさるこのごろであることよ。
- 鑑賞
-
巻第九 恋歌一 578
詞書「人につかはしける」
雨のやまない軒から落ちる雫が数知れないように、恋しさが数知れずまさるこのごろだ、と詠んだ歌である。降り続く雨の雫に、絶え間なくつのる恋しさを重ねている。
本巻の第五百三十七首も、降り続く雨に恋しさの増すことを詠んでいる。
作者の「かねもり」は平兼盛である。光孝天皇の子孫で、篤行王の子とされる。駿河守などを務め、三十六歌仙の一人である。小倉百人一首には「忍ぶれど色に出でにけりわが恋は」の歌が採られている。
初句「雨止まぬ」は、雨のやまない、の意である。
二句「軒の玉水」は、軒から落ちる玉のような雫、の意で、初句から二句までが三句の「数知らず」を導いている。
三句「数知らず」は、数知れず、の意である。
四句「恋しきことの」は、恋しく思う気持ちが、の意である。
結句「まさるころかな」は、増していくこのごろであることよ、の意で、本巻の第五百三十七首の四句「まさるらん」と同じく、雨とともに恋しさが増すことを詠んでいる。
たまみづ:玉のように美しい水、軒から落ちる雫
- 作者
-
平兼盛
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
浅茅生の小野の篠原忍ぶれど あまりてなどか人の恋しき
- 次の歌
-
伊勢の海に延へても余る栲縄の 長き心は我ぞまされる