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今宵君いかなる里の月を見て
都に誰を思ひ出づらむ

歌の意味
今夜あなたはどのような里の月を見て、都にいる誰を思い出しているのだろうか。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 792

詞書「月を見て、田舎なる男を思ひ出でてつかはしける」
 今夜あなたはどこの里の月を見て、都の誰を思い出しているのだろうかと詠む歌である。詞書から、月を見て、地方にいる恋人の男を思い出して贈った歌とわかる。同じ月を見ているはずの恋人が、都の自分を思い出してくれているかを案じる心を詠んでいる。
 作者の「中宮内侍」は、中宮に仕えた内侍の女房の呼称で、誰を指すかについて定説を見ない。内侍は、内侍司に仕えて天皇への取り次ぎや宮中の礼式をつかさどる女官である。

 初句「今宵君」は、今夜あなたは、の意である。第七百八十七首の「今宵の月を」と同じく、今夜の月を詠んでいる。
 二句「いかなる里の」は、どのような里の、の意である。
 三句「月を見て」は、月を見て、の意で、前の第七百九十首が旅先で月を見る側から詠むのに対し、この歌は都で待つ側から詠み、視点が反転している。
 四句「都に誰を」は、都にいる誰を、の意である。第七百九十首の初句「都にて」と都の語を共有している。
 結句「思ひ出づらむ」は、思い出しているのだろうか、の意で、「らむ」は現在の推量を表す。

さと:里。人の住む村里
おもひいづ:思ひ出づ。思い出す
作者
中宮内侍
出典
拾遺和歌集
前の歌
照る月も影水底に映りけり 似たる物なき恋もするかな
次の歌
月影を我が身にかふる物ならば 思はぬ人もあはれとや見む