照る月も影水底に映りけり
似たる物なき恋もするかな
- 歌の意味
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空に照る月でさえ、その姿が水底に映って似たものがある。それなのに、何にも似たもののない恋をすることよ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 791
詞書「題しらず」
空に照る月でさえ水底に影を映して似たものがあるのに、私は何にもたとえようのない恋をしていると詠む歌である。月とその水に映る影という似姿を引き合いに、比べるもののない自らの恋の深さを訴えている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「照る月も」は、空に照る月も、の意である。前の第七百八十九首の「天照る月も」と同じく照る月を詠むが、隠れゆく月に対し、こちらは水に映る月を詠んでいる。
二句「影水底に」は、その姿が水底に、の意で、「影」は月の姿を言う。
三句「映りけり」は、映っているのだなあ、の意で、ここで句切れとなる。「けり」は気づきの詠嘆を表す。
四句「似たる物なき」は、似たものがない、の意で、水に映る似姿をもつ月と対比している。
結句「恋もするかな」は、恋をすることよ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。
みなそこ:水底。水の底
- 作者
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紀貫之
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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都にて見しに変はらぬ月影を 慰めにても明かすころかな
- 次の歌
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今宵君いかなる里の月を見て 都に誰を思ひ出づらむ